長い東京からの旅を終え、帯広に特急列車で入った。東京はまだ秋の気配がなく、蒸し暑い日が続いているのに、帯広に降りたとたんゾクゾクゾクと寒気がし、急に体が冷えるのを覚えた。なるほど天気予報で見ていると、いつも日本で一番寒い所とされている土地に着いたのだと再確認した。
迎えの人とスタッフがゾロゾロとまちを歩き、大きな荷物を持ち歩いていると、まばらな人通りから、注目を受けた。都会にいると気づかないもので、歩きながら大きな荷物を持って我が物顔で町を歩く姿が異様に映ったのだ。信号が赤になり、ふと空を見てみると、真っ青に澄んだ高い空、顔をきる風、ふとその風を大きな口を開けて食べてしまった。帯広のおいしい空気、都会では味わえないおいしい味わいであった。
屋台村があるのだと、すぐに案内され、北の起業広場共同組合の人が今日の案内役であることに気づいた。その屋台はメインストリートにあり、寒い地方独特のビニールシートで囲ってある。好奇心の強い私は、すぐにでも入って食べたり見たりしたくなり、案内役の人に頼んですぐに実行した。
入ってみると台所はきれいに整頓されており、上下水道も完璧に整っていて、「まあきれい!三ツ星レストランと設備が変わらないわ」と大声を上げてしまった。この小さなスペースにどの店もこのような設備をきちんとすることは、みんなの協力と上に立つ人の姿勢がすばらしいということが、お客として入った私にもしっかりと伝わり、メニューのすべてを食べてみたくなった。
私の入った店は、野菜が中心で当たり前の豆の煮たもの、当たり前のポテトサラダ、当たり前の玉ねぎと牛肉の煮付け、それにピリッと冷えたおいしい地ビール。「おいしい!!」と周りを見渡すと、お客でいっぱいだった。それぞれがみんな食べた覚えのあるものばかり、十勝平野で堂々と収穫された、豆、ジャガイモ、タマネギこれらの産物をおいしく料理し、伝えているからこんな小さな屋台に、人がこんなにも集まってくるのだろう。