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4月「友人のマッガニガルさんと、日本の街をパン紀行」
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ある年の新年早々、アメリカから友人のマッガニガルさんが来訪したので、銀座のデパートの地下にあるパン屋さんに連れていってあげたときのことです。
パン屋さんに入るなり彼がびっくりして大きな声をあげました。
「どうしたの?何があるの?」
そこには、お目当てのパンを買うための長い行列。
配られる整理券をもらうために「われ先に」とその券すら奪いあうかのような光景だったのです。
人気のパンをかぎつけると食べずにはいられない私ですから、何のパンにそんなに並ぶのかと気になって仕方なくなり、「せっかくだから」とマッガニガルさんを促して列に加わりました。
待つこと数分。ミルクの甘い香りがついた、パンの焼けるにおいがお店中に広がりました。マッガニガルさんが驚いたこの行列のおめあては、この『パン・ド・ミ』だったのです。
このパンは食べてみると香ばしく、中は雪のように真っ白で綿菓子のようにフワフワで口当たりも良い。
高級イギリスパンタイプで材料も吟味されていて、このお店のこのパンに掛ける意気込みがひしひしと伝わってきました。
この行列の人気具合も「なるほど」という感じです。
整理券を握りしめて並び、『パン・ド・ミ』を受け取る人たちの幸せそうな顔・顔・顔。
私も何となくうれしくなってふむふむとうなづいてしまいました。
パン好きの私としては「パン君、君のことが食べたくて並んだ人たちを満足させてあげてね!! おいしく味わっていただいてね。そしてまた次にも選んでもらえるようにね!」と心の中で祈ってしまいました。
ふと、マッガニガルさんを振り返ると相変わらず不思議そうに首をかしげている。
彼の国アメリカでは「パンを買うのに並ぶという行為を目にすることなんてない」と言って感心しているようです。
「日本にもたくさんのパン屋さんががあって、種類も選ぶのに苦労するほどあるのに、ここだけ、このパンにだけ長い列ができるなんて、日本はやっぱり不思議の国だ」。ですって。
『パン・ド・ミ』を買った後、マッガニガルさんが選んだのは『ベーグル』。
器用にナイフでハンバーガーのように横に切り分け、塩茹での豆なんかを乗せてかじるんだそう。きっとうすーいアメリカンコーヒーを飲みながら、ね。
そのお店を出て、銀座のパン屋さん巡り。
日本の菓子パンを代表する『あんパン』、『クリームパン』、『コロネ』で有名な木村屋さん。
いつもの通り人人人でにぎわっていました。
彼は日本に8年も居たのにどうしても『あんパン』のあんとパンという取り合わせになじめなかったそうなので、この『あんパン』の人気ぶりにはさらにびっくりしたみたい。
加えて違う店でもパンに並ぶ人たちを見てマッガニガルさんは日本のパン食ぶりに心底驚いたみたいです。
私も外国に行って実際に見て、話に聞いたり本で読んだことと随分違うなんてことを体験しましたけれど、マッガニガルさんも9年ぶりに来た日本で、自分が居たときとはまた変わった日本に驚いたみたいです。
「パン屋さんを見て回っただけで日本の替わりようがわかったような気がするよ」なんてお礼されちゃいました。 |
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